「鯨の王」藤崎慎吾

鯨の王

鯨の王

「ああ、どうなんだろうな。しかし、やってくれれば俺としてはありがたい。ぜひやるべきだ。何百メートルの深海にまで、人間がうろちょろする必要はないよ。こんなに暗くて寒くて息苦しい場所くらいは、せめて他の生き物たちだけのために残しておいてもらいたいもんだ」
「そう言う私たちも、こうしてうろちょろしてますけど」
「確かに」須藤は苦笑した。「じゃあ早いところクジラと仲直りして、海上へ戻ろう」
ホノカはうなずいた。
「そうですね」
「……初めて意見が合ったな」