「乳と卵」川上未映子

乳と卵

乳と卵

それから自分の背丈を越えた柱のような巨大な赤鉛筆を抱えて、さらに巨大な紙に、大きなしるしをつけてゆかなければならないというような心象がたちこめて、重さだるさに意識がねっとりと沈んでゆくなか、生きていく更新が音もなく繰り返される。

緑子、ほんまのことって、ほんまのことってね、みんなほんまのことってあると思うでしょ、絶対にものごとには、ほんまのことがあるのやって、みんなそう思うでしょ、でも緑子な、ほんまのことなんてな、ないこともあるねんで、何もないこともあるねんで。


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