「蘆屋家の崩壊」津原泰水

蘆屋家の崩壊 (集英社文庫)

蘆屋家の崩壊 (集英社文庫)

脳内恐怖物質、とおれが名付けた。青黒くて透明感のある、ちょうどモンブランのブルーブラック・インクみたいなイメージだ。それを蓄えておく小罎が、頭蓋のなかに入っている。だれの頭のなかにもある。きっとモンブランのインク罎同様、うずくまって空を見上げている獣みたいな形でもしてるんだろう。滑り止めのぎざぎざの入った、使い切ったあとも捨ててしまうのが惜しい気がして別の用途に頭を悩ませてしまうような、それでいてけっきょく空のまま机の抽斗に入れたきりになってしまうような、凝った形のこぎれいな罎だろう。


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